ささやかな終末

小説がすきです。

『冬期限定ボンボンショコラ事件』を読み終えて(この時代を忘れないための短い記録)

ああ、終わってしまった。夢にまで見た冬期限定。喉から手が出るほど読みたくて、何度もページを閉じてしまうくらい読みたくなかった冬の物語を、とうとう読み終えてしまった。余韻に浸りながら感想を書いていたら完結がほんとうにつらくなってきて、三時間…

『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』『秋期限定栗きんとん事件』再読感想、そして冬がくる前に刻みたい現在地

『冬期限定ボンボンショコラ事件』の刊行に向けて、〈小市民〉シリーズの長編三作を再読した。どれも以前読んだときとは異なる味わいがあり、様々な点に気づかされた。数日後の私はもう、小鳩くんと小佐内さんの冬の物語を知ってしまっている。つまり秋まで…

「新海誠好きの元彼」同人誌企画への3つのモヤモヤ、あるいはごく個人的な悲しみについてのこと

はじめに ①見知らぬ誰かを笑いものにする態度およびそのことで資金を稼ごうとする姿勢にモヤモヤ ②企画者の立場にモヤモヤ ③他者を傷つける可能性を考慮していないことにモヤモヤ おわりに 追記(企画者からの応答を受けて) はじめに 今、巷で“みなさんの「…

〈小市民〉シリーズと私

米澤穂信の〈小市民〉シリーズのアニメ化が決定した。なんでも半年後の2024年7月から放送開始するらしい。とてもはやい。アニメ化の報と同時にPVが公開され、主人公二人の声優も発表された。私の観測している範囲では異例のはやさである。まだこのはやさに理…

石川博品『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』のここがおもしろい! ネタバレなし感想&紹介

はじめに 『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』あらすじ ①前代未聞⁉ 女装して入内! ②皇帝のハートを掴みたいなら強くなれ⁉ 野球で勝負! ③香燻、次第に苦悩⁉ とびきりの青春小説! おわりに はじめに 『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』…

私の読書スタイル ~社会人なりたて編~

実は先月下旬から社会人になって暦通りに働いているのだけれど、読書スタイルに大きく変化が起きた。Twitterで「ブログで読んでみたい記事はありますか?」とお題を募集してみたところ、「読書環境について知りたいです」「読書スタイルが気になります!」と…

いつか見た夢の灯 ~木緒なち『ぼくたちのリメイク』完結記念ブログ~

木緒なち『ぼくたちのリメイク』(MF文庫J)が完結した。ライトノベルの長期シリーズものはまず、最終巻が出るだけで奇跡的だというのに、綺麗に終わったものだから、とてもうれしかった。発売日にいそいそと読みながら、『ぼくたちのリメイク』に出会った頃…

影響を受けた100作

好きな小説を100冊選ぶという企画は、長年何度もチャレンジしながらも最後まで選びきれずに失敗し続けていた心残りである。しかし今回、「好き」だけではなく「影響を受けた作品」との条件を追加し、100冊ではなく100作、小説だけではなく映像作品等も込みに…

奈須きのこ『空の境界』初読感想文、あるいはゼロ年代に対する短い戯言

奈須きのこ『空の境界』を読んだ。傑作だった。 西尾維新は10年来のファンなのに、奈須きのこの小説を読んだのはこれが初めてだった。本作を読んで彼が「ぼくらの愛したゼロ年代」の潮流にいる小説家であると理解し、私が受けた衝撃は、自分でも計り知れない…

自己紹介がてらの好きなキャラクター31選

本記事は「#いいねの数だけ好きなキャラを言う見た人もやりましょう拒否権はない」という横暴なハッシュタグを元に作ったものである。強制力を感じるひとがいたら大変申し訳ないなと思いつつ、自己紹介の代わりとしてTwitterの私のアカウント上で行った。結…

少年と少女とまちがいを巡る物語 ~『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』『サクラダリセット』論~

本記事は渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』と河野裕『サクラダリセット』の関係性を考えるものである。二作品の重大なネタバレや重大な箇所の引用を含むため、未読者は注意されたい。 渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(ガ…

作者と結ぶ共犯関係 ~『捜査線上の夕映え』感想(ネタバレなし編)~

この度、火村英生シリーズ最新作『捜査線上の夕映え』が刊行された。傑作だった。 本記事は『捜査線上の夕映え』(以下『夕映え』と記載)のネタバレが含まれない感想である。『夕映え』未読の方には紹介文として捉えていただけるように、それでいて既読の方…

杉井光『楽園ノイズ』ネタバレ感想

はじめに 5月のある晴れた朝に 約束の音が聴こえる場所 おわりに はじめに 杉井光『楽園ノイズ』を11ヶ月ぶりに読んだ。やはり傑作だった。 ブログを書くのをサボっている間にいろいろなことがあった。昨年11月に刊行されたライトノベルのガイドブック『この…

杉井光『楽園ノイズ』感想

はじめに あらすじと手に取ったきっかけ 作品に合わせて文体を変えるということ おわりに はじめに 杉井光『楽園ノイズ』を読んだ。傑作だった。 この記事は『楽園ノイズ』を読んだ感想文だが、書籍情報のあらすじに載っている以上のネタバレは一切含んでい…

2020年1~4月に読んだ小説 マイベスト10

はじめに 1.虻川枕『パドルの子』(ポプラ文庫) 2.石川博品「たとえぼくたちの青春ラブコメがまちがっていたとしても、」(ガガガ文庫刊『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。アンソロジー4 オールスターズ』所収) 3.伴名練「ひかりより速く、ゆるや…

「名もなき花」を読んで感じたパーフェクトヒロインの幸福について

日南葵の人生における最大の不幸は、彼女の中学校に雪ノ下雪乃や桜島麻衣がいなかったことだ。誰もが認める高貴さや知名度を持ち合わせている少女たちと出会えなかったから、すべてを計算と努力で乗り越えてきたパーフェクトヒロインは、個人的な敗北を知る…

2010年代の小説 マイベスト10

はじめに もうすぐ2010年代が終わるらしい。まったく実感はないけれど、カレンダーを見るに確からしいのだ。 2010年から2019年にかけて、たくさんの小説を読んだ。笑ったり、泣いたり、驚いたり、楽しくなったりした。それならば、一年につき一冊ずつ「いち…